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赤ちゃんがどこから生まれてきたか、という話になったときだったと思う。
息子と娘に、「あなたたちは、お母さんのおまたから生まれてきたんだよ」と言った。
「おしっことうんちの出る穴があるけど、女の人は、3つの穴があるんだよ。赤ちゃんが出る穴が、あるからね」
と言うと、息子は恥ずかしがって、顔をそむける。
ふとついでに、母方のおばあちゃんは私を、父方のおばあちゃんは父親を、おなかを切って産んだんだよと教えたら、二人は、びっくり仰天していた。
目を丸くして驚いている様子が面白かったので、
「おへその下から、こうやって縦に切ったんだよ。今度お風呂に入ったとき、切った跡が残っているから見てごらん」
と、付け加えた。
神妙に聞いている二人。
それで私は、娘に伝えたかったことを口にした。
「あなたは、おまたからちゃんと赤ちゃんを産むんだよ。おなかを切って、産んじゃあ、駄目だよ」と。
帝王切開にならざるをえないときも、ある。
でも母も、元お姑さんも、計画出産の方がすすんいる、合理的だ、近代的だと思って、自然分娩を選ばなかった。
そしてふたりとも、母乳が出なかったからと、粉ミルクで育てた。
助産院での自然分娩、おっぱい育児。
私は、寂しかった子供時代の恨みから、子供だった私より我が子の方が幸せになるようにと、一生懸命だった。
おっぱいを飲ませるには、必ず抱っこしなければならない。
でも哺乳瓶で飲ませるなら、抱っこしなくてもいい。
我が子と同じ月齢の赤ちゃんたちが、床に寝転がったまま、ひとりで哺乳瓶を持ってミルクを飲んでいる姿を見るのは、悲しかった。
赤ちゃん時代の自分も、こんなふうに、抱っこもしてもらえずにひとりで飲んでいたんだろうと思うと、痛ましかった。
人間の一生の中で、最大の試練は産道を通り過ぎるときだ、と聞いたことがある。
我が子たちには、その最大の試練を受けさせることができて、よかったと思っている。